デンタルケア ② ~ デンタルケアとは歯を磨くことだけじゃない ~
こんにちは。
ベルク帝塚山の山下です。
またまたデンタルケアについて、です。
前回の記事で、麻酔による手術であろうが無麻酔の処置であろうが、歯石や汚れを『除去すれば終わり』といった考えではなく、ご家庭での定期的なケアを意識していただく事こそが本当のデンタルケアだと思います…みたいなことを述べさせていただきました。
そして、今回は『歯磨き』のみでなく、それ以外の視点からでもデンタルケアをしていただきたく、続きを書いていきます。
さて、タイトルで『歯を磨くだけではない』と思わせ振りな事を書いていますが、実際のところ、『歯磨き』は非常に重要なケアの一つです。
『歯磨き』はお忙しくても、愛犬の健康のために飼い主様には必ず行なっていただきたいケアの一つです。
我々人間は毎食後とまではいかなくとも、朝晩2回は磨く習慣が大抵の方にはおありかと思います。
しかし、愛犬の歯は日常的に磨いていない…という飼い主様はまだまだかなりいらっしゃいます。
『歯は磨いた方がいいです。』
とお伝えすると、
『そうなんですか?』
と驚く方と、
『やっぱり磨かないとだめですよね…』
と仰る方と大体二手に分かれます。
大きくまとめると‥
『やっぱり犬も歯を磨かないとダメなの?』
という認識のようです。
確かに、
『動物は磨かなくてもいいんじゃないの?』
とお思いかと思いますが、野生動物であれば磨く必要はないでしょう。
しかし、それには理由があります。
愛犬となると、人間が食事管理しています。
そこで本題に絡んでくるのですが、同じ動物でも自分で食事を調達する『野生動物』と、飼い主である人間が食事を用意してあげる『愛犬』とでは食事内容が大きく変わってきます。
この食事内容こそが『野生動物』が歯を磨かなくても大丈夫な理由、つまりは冒頭で述べた『歯磨き』以外のデンタルケアです。
実際、『野生動物』の歯は誰も磨いてくれないのに、なかなかピカピカです。
このことは、自分で狩りを行い、生きた餌を新鮮な状態で食していることが影響しています。
彼らの食事こそが、歯を汚さない、かつキレイに保つ事を可能にしているといえます。
歯がボロボロ、そして歯周病になっていたりするなど、言語道断。
彼らは狩りをすることができず飢え死にしてしまうことでしょう。
なぜなら、彼らにとって『歯』は食べるための器官というよりはむしろ、武器ですから。
その武器がボロボロであることは致命的なのです。
しかし、そんなことはまずありません。
また、犬本来の食べ方も関係していて、歯はお肉を切り裂くために使うだけでよく噛んでは食べません。
基本、飲み込みます。
▲ 野生オオカミの口腔内。全くケアしていないわりには健康的な状態だと思いませんか?
歯がキレイな『野生動物』の食事と『愛犬』の食事の違い
一方、野生動物と違い、愛犬が食するものの多くは、市販されている『ペットフード』だと思います。
その中でも、高熱加工処理されたカリカリごはんと呼ばれる『ドライフード』が主流と言えるでしょう。
犬が消化しづらい穀物が主体の、発ガン性のある合成保存料まみれの劣悪なものもまだまだ多く出回っていますが、そういった酷いものは今は置いておいて(こんなフードは論外です…)、1kg 1,800~4,000円前後の『プレミアムドッグフード』と一般的に呼ばれているドライフードを基準に話を進めて参ります。
こういった高価格帯のドライフードは、製造メーカー曰く、食材の質も人間が食するレベルであり、高品質のようです。
しかし、ベルク帝塚山は『ドライフード』を推奨していないので、これから少し否定的な考えを述べます。
まず、どんなに良い素材を使っていても、これらの『ドライフード』と呼ばれる類のごはんは、保存することや製造過程の容易さ(高熱で加工できるため、衛生的にも安全)、さらには与えやすさなどに重きを置いています。
あくまで人間目線でつくられていると言えます。
失礼な言い方をすれば、飼い主様や製造メーカーの『都合』ですね。
購入後のご自宅での保存方法においても常温で1年以上保存できるものがほとんどです。
そして、与えるときはお皿にバラバラ~と入れて終わり。
非常に手間のかからないお食事です。
多くの犬猫を一時的に保護しているなどの事情があるなら非常に助かるフードですが、この記事をお読みの方は愛犬の食事に関心がある方だと思うので、記事の後半でより理想的な食事をご紹介させて頂きたいと思います。
こういった目線で作られているがゆえに、高熱加工し水分値の低い固形物として出荷しないと上記した『都合』は得れません。
それゆえ、この『ドライフード』はデンタルケアの観点から考えると歯をかなり汚れやすくしてしまうご飯と言えます。
分かりやすく我々の食べ物で例えるなら、『ドライフード』はスナック菓子やビスケットのような製法です。
それらを飲み物無しで食べているときのお口の中を想像してみてください。
食べカスが歯に付きまくっているはずです。
しかも、犬は我々人間のように舌でお掃除もしません。
食後に水を飲んだとしても、ゆすぐように飲んではくれません。
それゆえ、付いた歯垢(食べカス)は歯にずっと付いたままです。
そう、ずっと付いたままなのです。
我々人間の感覚で考えると気持ち悪いですよね。
ちなみに、大型犬はドライフードを食べているのに歯石がほとんど付いていない子が多いですが、それは飲み込んでいるからです。
フードは歯を素通りです。
ですので、口が小さく、どうしてもよく噛んで食べざるを得ない(これは犬本来の食べ方ではない)子が多い、小 ~ 中型犬は特に要注意です。
さらに、酸性に傾きやすく虫歯ができやすい人間と違い、犬の口腔内はアルカリ性に傾きやすいため歯垢は歯石になりやすく、歯周病になりやすい環境なのです。
放置すると歯石まみれになってしまいます。
イメージで言うと鍾乳洞のような状況です。
▲ 全くケアせずに放置された状態。歯石がビッチリ付いてしまっています。。。
ドライフードを与えていながら、歯を磨かないと大変なことになる、ということがご理解いただけたでしょうか?
‥とはいえ、強く磨き過ぎるのも要注意
『歯磨き』は重要ですが、強くゴシゴシするのはあまりお勧めできません。
実店舗のサロンでも歯はキレイなのに、歯茎が赤黒く腫れていたり、歯肉が上がってしまっている子を見かけます。
お伺いすると、『歯磨き』を教えてもらったので暇さえあればゴシゴシと磨いていて、ついつい必死になってやってしまうとのこと。
なかなかのパワーで磨いているそうです。
人間もそうですが、強く磨き過ぎるのはよくありません。
結局、強く磨いたところで歯周ポケットや歯の裏側の歯垢を完全に取り除くのは非常に難しく、どうしても磨きやすい犬歯周辺ばかりガツガツ磨いてしまいがちです。
じゃあ、どうするの?って話ですが、与えるごはんを変えて、磨き方や磨くタイミングを意識していただければ、意外とイージーです。
このイージーというのは、そこまで深くお考えにならなくとも大丈夫です、という意味で、です。
ドライフードから歯垢・歯石の付きにくい『生食』に変える
先に述べた通り、我々人間の食事でもステーキやビスケットなどの熱加工食品は歯に食べカスが付いて大変ですが、お刺身や今はもう飲食店で食べることが出来なくなった生レバーなどの生のお肉であれば、歯に付いて取れないといったことは起きません。
このことは『犬にとって理想の食事』や『生食をオススメする理由』においても詳しく書いていますので、そちらをご覧いただければ幸いです。
つまりは、毎日の食事を歯に汚れが付きにくい犬本来の食性を考えてつくられた非加熱のものにし、食後にササっと優しく歯を磨く(拭く、拭うくらいのイメージ)だけ。
こう言うと語弊を招くかもしれませんが、一生懸命に行う必要はありません。
犬の口腔内の歯垢は約3日で歯石化すると言われています。
本来は毎食後が理想ではありますが、お食事が『生食』なら、2日サボってもまだなんとか大丈夫です。
オヤツを与えていれば、また話は別ですが。
歯周ポケットや歯の裏側はしっかり磨かないとダメではなかったのか?と読んでて思った方もおられるかもしれませんが、それはドライフードを食べているのであれば、です。
『生食』のみ与えていれば、もともと歯に汚れが付きにくいので全く磨かなくても致命的にはなりません。
ただ、何もしないよりは軽くお掃除する方が、よりベターです。
そのことは冒頭で述べた通り、野生動物が証明してくれています。
『いやいや、付いてるよ~』、ってなった場合は与えているオヤツを疑ってください。
オヤツも与えずに『生食』のみ食べていれば、デンタルトラブルとは無縁かもしれません。
これが、色んな方がご覧になるブログ記事でなければ無縁です!と言い切りたいくらいです。
ただ、ごはんを『生食』に変えたとしても、オヤツをまったく与えないのはさすがにちょっと可哀想‥という場合は毎食後ではなく、オヤツを与えた直後に磨く習慣にしなければいけません。
私は(ジャーキーやビスケットなどの加熱加工された)オヤツを過剰に与えることはあまりお勧めしません。
少し厳しい言い方になってしまいますが、『目が合った』、『お利口だったので褒めてあげたい』などといった理由でオヤツを日常的に与えるくらいなら、そのタイミングでいっぱい撫でてあげたり、一緒に遊んであげたりする方がよっぽど愛犬にとっては嬉しいはずです。
オヤツは歯が汚れやすく、栄養も偏るため肥満にさせやすく、与えることでの犬にとってのデメリットはメリットよりも多いと思います。
効果的に与える程度に止めておくべきだと思います。
私はこういった考え方そのものも、一つのデンタルケアだと思っています。
とにかく、飼い主様のご意識一つで、愛犬は見違えるほど健康になります。
長文になりましたが、ご参考になれば幸いです。
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